映画「アバター」の3D技術 - Avatar IMAX 3D

James Cameronが監督(タイタニックターミネーターで有名)し、3D業界が最も期待する「アバター」が公開された。アメリカでは、12月18日、日本では12月23日のことである。筆者も12月25日にわざわざ箕面IMAXシアターまで出かけて、見てきた。これは凄い!期待以上の出来栄えである。この映画ならば、家の3DTVで、何度でも見たいと思わせた。

James Cameronの動きは、思い起こせば、1996年の冬、フロリダのUniversal Studiosで見た Terminator 3Dから始まっていたのだろう。もう13年である。そして、遂にこの日が来た。この映画は、3D映画を大きく普及した映画として、今後、語り継がれることになるだろう。

映画館のデジタル化と3D

3D映画ブームは、歴史的には今回が3回目になるらしい。今回のブームは、以下の3つが原動力である。

  • デジタルシネマ
  • 三次元コンピュータグラフィックス
  • コンテンツ

これらの切り口から、今の3D映画ブームを眺めてみたい。

デジタルシネマ

現在、街の映画館は、徐々にデジタル化されつつあるのをご存知だろうか。アメリカではDigital Cinema Initiativesという団体ができて、全米3万8千のスクリーンをデジタルプロジェクターに置き換えつつある。このデジタル化の際に3D化するのは、従来に比べコストが低く、すでに数千スクリーンが3D対応と聞く。

デジタル化や3D化を支える技術はTexus Instruments社(TI)のDLPRealD社の偏光技術である。

プロジェクターの前に円偏光板(Z-screen)という頭をかしげてもズレのない偏光方式の板を設置し、時分割で左右の眼に入る映像をスイッチングする。映画は、通常24フレーム/秒であるが、3Dでは、左右のぞれぞれの目に対する映像を72フレーム/秒、時分割し交互に表示(合計144フレーム/秒)する。3Dでは、この周波数以上でなければ、左右の映像がうまく融合されて、立体感が得られないと言われる。

TI社のDLPは、高周波スイッチングデバイスであり、この用途にバッチリはまったのである。なお、米国では、DLPを用いたリアプロTV(サムソン製や三菱製)がいち早く3D化された。

同様に家庭用では、動作周波数応答の高いプラズマディスプレイが有利である。パナソニックが3Dに力を入れるのは、このためである。ソニーなど、液晶で対応したものをCEATECなどで展示しているが、原理的に不利なのは否めない。

なお、RealDの技術はメガネが安価である点が長所である。ワーナー・マイカルシネマなどでは、3Dメガネは持ち帰り可能である。液晶シャッター方式(赤外線で同期)では、XPand社のメガネが使われ、高価なため、毎回、回収される。これら方式の解説は、こちらのページが参考になる。

3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)

1995年のToy Story(初めてのフルCGアニメーション)以降、アニメーションを3Dコンピュータグラフィックスで作成する技術が急速に進歩した。これらの映画は、3Dモデルを内部に持っているので、左右の眼の映像を作成するのは、いとも簡単である。ちなみにToy Story 3(3D版)が来年6月18日に公開予定されている。

なお、Toy StoryのCG製作を指揮したのは、Ralph Guggenheimという人で、カーネギーメロン大学出身である。同大学はコンピュータサイエンスとアート(Andy Warholなど)の学部が著名である。私が2年間滞在した際(1995年〜1997年)にGuggenheim氏が母校で講演をし、通路まで学生が溢れ、教授たちが嫉妬したほどだった。

SFXなど、実写とCGとの融合では、3Dモデルが利用される。このモデルが3D表示用の左右の目の映像作成に利用される。これらの3D用CGツールが急速に準備されている。なお、Intel社も勝機と見て、レンダリング性能をアピールしている。

コンテンツ

従来の3D映画は、ホラーなど、3Dの特殊効果に頼るコンテンツが多かった。今回のブームでは、Dreamworks社(映画製作会社)のJeff Katzenbergなど映画を製作する人たちが3D映画を強力に進めようとしている。(Katzengerg's 3D Revolution)同社は、最近では、"Monsters vs Aliens"を公開したばかりだ。

この動きに賛同する監督には、James Cameron や Steven Spilbergなどがいる。実際、Star Warsの3D化の作業も行われていると、コンピュータグラフィックスの学会・展示会であるACM SIGGRAPHでは報告されている。(同時にスピルバーグは気まぐれという噂もある。)なお、今のブームの最初の火付け役となった作品は、ディズニーのチキンリトルで2005年公開である。

従来と製作方法が違うのは、3Dの奥行き感も含め、監督が指揮する点である。従来は、特殊効果担当者が、「これでもか」的に奥行の深いシーンを多用したが、それが、現在、全体のストーリーの中で、自然な奥行き感を入れるようになった。このため、従来よりも疲れない作品に仕上がっているものが多い。

映画製作会社と家電メーカーの思惑

映画産業は、インターネットやTVゲームなど他の娯楽に押され、業績低迷が続いている。DVD販売で稼いだビジネスモデルを、HD DVDBlu-Ray Diskで再びという計画があまりすすんでいない。観客を劇場に呼び戻す大きな仕掛けとして3D映画がある。

家電メーカーは、この劇場の3Dの感動を自宅に持ち込む機器を販売したい。それが、3DTVとプレイヤーである。パナソニックは、今年1月からBlu-Ray Disk Associationという普及団体で、3Dフォーマットの規格化作業を率いている。ディスクに左右の映像を一枚ずつ並べて記録する形式で"Side-by-side"と呼ばれる。他の方式には、"Checker Pattern方式”と呼ばれ、画面を格子状に分割して格納するものもあり、Dolbyが支持する。

2009年1月のラスベガスでのCEショーや、2009年10月のCEATECでは、各社、こぞって3DTVを展示した。(CEショーのまとめ)この「アバター」をきっかけに、一気にブームを本格化したい考えだ。さて、この不況の中、この3D技術は、普及するのか。皆さんのアバターの感想はいかがなものだろうか。